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「Safe And Sound」 KYOSUKE HIMURO feat. GERARD WAY
HIMURO com. より
L.A.という音楽環境がもたらした、ふたりの出会いは

氷室自身、1997年より本格的に活動の拠点をL.A.に置き、その音楽活動の環境から、フェイバリット・アーティストにマルーン5などの若手のアーティストも挙げていた氷室京介。マイ・ケミカル・ロマンス(My Chemical Romance)も、ブレイク以前から注目していたバンドのひとつだったとか。楽曲もさることながら、とくにジェラルドが構築する詞の世界観に共感していたとの事。

一方、ジェラルドは、ミュージシャンとして活動をはじめる以前に、アニメーションの仕事に携わっていた経験や、現在もコミック・ブック・アーティスト(コミック原作者)として活動していることから、日本の文化に強い興味を抱いていたとの事。全英全米で絶大な人気を博しながらも、2004年のメジャー・デビュー以来、精力的に5度の来日をしており、2007年のワールド・ツアーの日本公演はロックの殿堂・日本武道館を選択。

昨年春、偶然にもL.A.の氷室の住む地域に、ジェラルドが移住。その環境から、兼ねてから氷室がミュージシャンとしてジェラルドに興味を抱いていたことを知る知人より、その事がジェラルドに伝わり、ジェラルドが氷室宅を訪ねたとの事。意気投合し、共同作業を始める。 昨年9月末、氷室自身のツアー終了直後から年末までの期間、氷室とジェラルドの間では何度ものやり取りが重ねられ、ついに今年初めにレコーディングを開始。


「Safe And Sound」の楽曲について

この楽曲の作詞、作曲はジェラルドが手掛けていますが、氷室に会った後、氷室の音楽観、ヴォーカルからイメージし、詞、曲とも書き下ろした作品。因み、ジェラルド自身、自身のバンド以外に楽曲を書き下ろしたのはこれが初。彼はヴォーカルとしても、もちろん氷室とともに参加し、また氷室との共同プロデューサーとしても、その役割を担っている。
アコースティックのデモからはじまり、4日間のレコーディングで最終的なアレンジを互いにつめ、完成に至る。氷室は、この歌詞をストレートに伝えるために、日本語詞をあえて制作せず、このままの英語詞で歌うことを選択。


レコーディング、参加ミュージシャンについて

レコーディングはL.A.の老舗“サンセット・サウンド・レコーディング・スタジオ”で行われた。
このスタジオは、ドアーズ、レッド・ツェッペリン、ローリング・ストーンズらレジェンドのロックバンドから、ジェット、ピンクら新鋭のアーティストたちがこぞってレコーディングを行っているスタジオ。サウンドプロデューサーにはミーカ、ピンク、ルーファス・ウェインライトらのプロデュース・ワークでも知られる、グレッグ・ウェルズ氏。また、バンドのメンバーにも錚々たる顔ぶれが布陣。ドラムには、氷室のアルバムにも過去参加している、ナイン・インチ・ネイルズのドラマーとしても名高いジョシュ・フリーズ氏、そしてそのジョシュのリズムには欠かせないベースのダン・ロスチャイルド、ギターにはこちらも氷室の楽曲ではおなじみのティム・ピアース氏を迎えた


更なるコラボレイト ファイナル・ファンタジーと共演決定!!

そして、このレコーディングの最中に、2005年にリリースされ世界的な大ヒット作となった、映像ソフト『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』の、ブルーレイ・ディスク完全版『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE』のエンディン(2009年4月16日発売)への楽曲提供の依頼を日本より受ける。2005年の『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』のリリースに際して、監督の野村哲也氏はじめ、制作陣の熱い要望を受け、そのエンディング・テーマとして氷室セカンド・アルバムより「CALLING」を提供。同作品は日本で100万枚、全世界で410万枚の大ヒットとなる。
今回のブルーレイ・ディスク完全版のリリースに際して、再び、楽曲提供の更なるオファーを受け、氷室×ジェラルドの楽曲のスケール感と、ファイナル・ファンタジーの世界観、その音楽と映像が織り成すエンターティメントの融合に共感し、今作「Safe And Sound」を快く提供。氷室×ジェラルドのファイナル・ファンタジーとの共演が決定した。


 2009年4月29日にiTunesより配信スタート
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GERARD WAY INTRRVIEW

日本で20年以上のキャリアと実績を築いてきたアーティストと、アメリカの人気若手バンドのヴォーカリストとの共演。そう聞くとまず両者の間の隔たりが目に付くかもしれないが、氷室京介とジェラルド・ウェイとの間にはその壁を軽々と越えるミュージシャンとしての共感があり、そんな二人の才能が出会うことで‘Safe And Sound’は生まれた。以前からマイ・ケミカル・ロマンスの作品でジェラルドが描く詞の世界観に共感していたという氷室に対し、ジェラルドもまた氷室の音楽とキャリアを知ることで自分自身を見つめなおす機会を得たといい、二人のクリエイティヴィティの呼応がこうして見事に楽曲として結実したことは、両者のファンにとっても非常に幸運なことだ。LAでのミュージック・ビデオの撮影の合間に行われたインタヴューで、ジェラルドはこの奇跡のコラボレーションがいかにして生まれ、どんな思いを込めて曲ができあがったのかを丁寧に語ってくれた。

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まずはおふたりが出会ったきっかけを教えてください。

「うん、最初は人を通してだったというか、音楽を通じた共通の知人から、「氷室が君達のバンドのファンで、一緒に何かできたらって言ってたよ」って聞いて、僕も興味があったので、彼の家を訪ねて行ったんだよ。僕は今LAに住んでいて、彼が住んでいるのはベル・エアーなんだけど、おかしかったのは、僕はポンコツのビートルに乗っていて、ほこりだらけの車でベル・エアーをドライヴして、すごく場違いだったんだ(笑)。それで、彼の素敵な家に着いて、もちろん彼自身もすばらしくて、彼の奥さんも素敵な人で、みんなで座って、コーヒーをもらって、それが日本製だったのが僕には最高だったんだけど(笑)、マシーンから出てきて、すごく興奮したよ。それで、会った瞬間からすぐに気が合って、僕は彼の名前を日本で聞いたことはあったんだけど、ちゃんと音楽を聴いたことはなくて、それで曲をもらって聴いたら、本当にすばらしくて衝撃を受けたんだ。何よりもまず、彼がこれだけ長い間活動してきた後で、今でもこんなすごいハードロックをやているっていう、その事実に一番感動したんだ。彼みたいに長いキャリアを持つ人だったら、大抵の場合ソフトになってしまうのに、彼はソフトになる気配もなくて、それで僕もこれからずっとやっていけるんだって励まされたし、この人にはどんな曲を書いても大丈夫だって確信して、それで今回の曲ができたんだよ。この曲はまさに彼にインスパイアされてできたもので、僕は彼の人生の細かいところまで十分に注意を払って、彼についてリサーチするうちにこう思うようになった。彼は自分の音楽を20年以上もやってきている人で、大きな影響力を持つバンドを始めた人で、いい時期もあればつらい時期も経験してきたはずで、勝利も敗北もすべて経験してきたはずなんだと。それで僕はそれが一体そんな感じなのかを表現して曲にまとめようとしたんだ。だからこの曲は本当に、彼のために書かれたものなんだよ。」


なるほど、以前からアイデアをあたためていた曲ではなかったんですね。

「そう、実際に彼に会って、その後で曲を書いたんだ。だから、うん、頭の中にずっとあったような曲とかじゃなくて」


おふたりの組み合わせに最初は驚いたのですが、実際に曲を聴いて、歌詞を読んで、この曲が生まれた理由にすんなり納得がいきました。一見距離がある二人のアーティストの共通点がコラボレーションを通して明らかになるという、とてもエキサイティングな体験をさせてくれる曲だと思います。この曲の歌詞はどのようにしてできあがっていったのでしょうか?

「それはすごく、うん、それを訊いてくれて嬉しいよ。というのもこの曲の歌詞は、もともと完全に当時の僕の個人的な視点から書かれたものだったんだ。で、それから彼のことを頭に思い浮かべてみたら、僕達ふたりの両方に当てはまることだってわかったんだよ。ひとりはまだキャリアのはじめのほうにいて、ひとりはもっと時間を経てきているわけだけど、実際に僕はそう感じてた。僕達は「ザ・ブラック・パレード」を出してから、かなりたくさんツアーを重ねて、その間楽しいときもあればつらいときもあったわけで、そういうこともすべてこの曲の歌詞の中に入っているんだ。それからこの歌詞では、自分がやっていることをキープするというか、むしろ再び自分の手に取り戻すんだってことを歌っている。つまり、曲を書いて、世界に届けて、それを聴き手が所有するようになる、それはもちろん最高のことで、ファンがそうやって曲に個人的なつながりを持ってくれるのは嬉しいことなんだけど、しばらく経つと、よからぬことを考える人達が曲を自分のものだと主張するようになって、そうなるともう嫌気がさしてくるんだよね。だからこの曲は、自分というもの、自分の表現、自分の信念を取り戻すことについて歌っている。それは自分自身のものであって、ほかの誰のものでもないっていう。‘Safe And Sound’が言っているのは、「これは俺がキープしていくんだ、勝手に守ろうとしないでくれ、これを守っていくのは俺の仕事なんだ」ってことで、だからすごくディープな曲なんだよね(笑)。実際、これほどディープな曲は、マイケミの次の新作のために書いた曲にもないくらいで。ある意味それはいいことだと思うというか、そういう時期をいったん乗り越えたんだという意味でね、でも本当にこれはものすごくパーソナルな曲なんだよ。」


なるほど、私もこの曲はあなたの現在の心境を反映したものなのではと感じていて、特にエンディングでたどりつく穏やかな境地がそれを象徴しているように思いました。イントロからすぐにヴォーカルが入って、徐々に緊張感を高めながらサビのコーラスでエネルギーとエモーションが爆発し、さらに曲が進むにしたがって切迫感が増していくようなドラマチックな曲構成ですが、エンディングは穏やかで希望に満ちたサウンドになっていて。

「うんうん、それはすごくいいね。そう、ほんとにそれっておもしろいというか、この曲の成り立ちと関わっているから。最初は、僕が氷室のところに行って、デモをアコースティックで生演奏して聴いてもらったんだ、デモは最初から最後までアコースティックだったんだよ。それで、氷室が言ったんだ、ファイナル・ファンタジーのディレクターが氷室の音楽のファンで「Advent Children」に楽曲を使いたいと言ってきているって。僕もファイナル・ファンタジーが好きで、特に今回の作品の「Final Fantasy VII」はマイケミのメンバーも全員大好きなゲームだから、いい話だと思って。でも指定された曲の時間がもっと長かったから、その空いたスペースを満たす必要があって、ここまで話すと種明かしになっちゃうけど(笑)、そうやってあのエンディングが生まれたわけで、最高のものができてすごく嬉しく思っている。30秒の音楽が必要で、それであれができて、完璧に曲に合うものになった。あのエンディングはそれまでのすべてを思い返して、穏やかな境地にたどりついたところなんだ。そしてミュージック・ビデオのパフォーマンスではそこで雨が降ってくるわけで、あの場面は最高のシーンの一つだと思うよ。」


ご自身のこれからのキャリアにおいて、この曲はどんな意味を持つものになると感じていますか?

「そうだな、作詞家としてよかったのは、これまで一度も言わなかったことをちゃんと言葉にできたこと。単刀直入でフィクションじゃない、それにメタファーでもないっていう。僕はこれまでずっとメタファーの後ろに隠れてきたところがあったけど、この曲はすごくダイレクトで、何を歌っているのかはっきりしていると思うから。つまり、幻滅して、うんざりして、結局のところ単純に疲れ果てていて、利用されたり、からかわれたり、いろんなことが企まれている感じがするっていう。でもこの曲はそのすべてを振り払うことについても歌っていて、だからこそ今僕が書いている新作用の曲は不満たらたらの曲にならずに済んでるんだ。この1曲を書いたことで終わりにできたんだよ。人によってはアルバム1枚分かかったりするけど(笑)、僕は1曲で出し切ることができた。「ああー、みんなが僕の音楽にいろいろ意見を言ってきて嫌だー」なんて言い続けることはしたくないからね。だから、作詞家として、そこから新たに進んでいけるっていう、節目になるような作品ができてすごくよかったよ。実際に今そこから先に進んでいっているから。それに、こんなにダイレクトな曲を書いたのはかなり久しぶりだったから、おかげでこれからまたはっきりした曲を書いていく道が開けたんだと感じてる」


レコーディングで特に思い出に残っていることはありますか?

「すべてが思い出に残ってるよ。レコーディング自体は4日間でやったんだ、グレッグ・ウェルズがプロデューサーで、セッション・ミュージシャンにもすばらしい人が集まってくれて、ジョシュのドラムもすごかったし。氷室はとにかくプロフェッショナルですばらしくて、スタジオに入ってきてすぐに自分のパートを完璧にこなしてしまうんだ。言葉でいろいろ話し合うというより、お互いにパフォーマンスで見せ合いながらできていくという感じで、みんながすばらしいから、僕も彼らの前で最高のパフォーマンスをしたいと思ってベストを尽くした。グレッグは見事なプロデューサーで、すごくうまくやってくれて……特に思い出に残っているのは、そうだな、さっき話したエンディングの内省的なパートを作り上げたときかも。僕にとっては、あれで曲が本当の意味で完成したと感じられたんだ。エンディングをつけようって話になったとき、「僕はこういう感じのがいい」って言ったら、グレッグが「僕も同意見だ」って言って、みんなもそう思っていて、全員が同じものを求めているのがわかったんだ。だからそのときのことが心に残ってるよ。だってあれは曲の中で一番希望的かつ悲しげなパートで、そもそも最初の段階では曲に入ってなかったものだったんだからね」


これから先、氷室さんや、ほかのアーティストとのコラボレーションを考えたりしてますか?

「そうだね、ソングライターとして、誰かのために曲を作るっていうのはいい経験になると思う。常に自分のためだけ曲を書くんじゃなくて、ほかの人のために書くことで自分自身について新しく学ぶことも多いわけで。だから将来的にも確実にまたやってみたいと思ってるよ。それが氷室とでも最高だし、ほかの誰かでもいいし、それに次回は自分で歌うことはしないかもしれないな。というのも、今回だって、氷室が全部歌ってくれたほうがよかったと思ってたんだ。彼の声がすばらしかったからね。彼が歌い始めたときにすぐ思ったよ、「そうだ、これって彼のために書いた曲なんだ」って。自分でもいいパフォーマンスができたと思っているけど、僕にとってはやっぱりこれは彼のために書いた曲で。だから将来は誰かのために曲を書いて、その人に全部歌ってもらって、僕は歌わないっていう、そういう感じにして、クリエイティブな面に集中してみたいというか、人のために曲作りをするけどパフォーマンスはしないってこともやってみたい。そのほうがおもしろいと思うんだよね。僕は曲作りだけで、そのほかは誰かに全部やってもらおうっていう。曲作り以外は‘仕事’って感じだから(笑)」


誰かのために書いた曲なのに、非常にパーソナルでもあるという、そこがこの曲のおもしろいところですよね。

「うん、そのとおりだね。かなり変わってる(笑)。そうなったのはおもしろいと思うし、すごく満足してるよ」


ちなみに歌詞の中で一番気に入っているフレーズはどこですか?

「最後のブリッジのところかな。ここはレコーディングの現場でできたんだ。デモにはブリッジがまったくなかったから、ブリッジが必要だってことになって、その場で一緒に作ったんだよ。歌詞自体は10分くらいですばやくできたんだけど、すごく気に入っている。聞える感じが好きだっていうか……あ、待って、僕が特に気に入っているのはここの2つだ(と言って歌詞の「The dead stop dreaming I'll set ablaze this life/Your shadow keeps me bright So try and stop me - or suffocate this light/Because I can burn all night」のところに印をつける)。この「I can burn all night」ってところが好きなんだ。すごく気に入っているし、誇りに思ってる。書いた後で、「あー、これは自分の曲のためにとっておけばよかった」って思ったくらいなんだから(笑)」